プロレス好きから、空手を始め、顔面パンチあり格闘技への興味というところで前回のお話が終わっていました。
プロレス好きから、UWFというプロレスでもあり総合格闘技でもある団体に強い興味を持つようになり、UWEの興行でシュートボクシングという格闘技の存在を知り、益々、顔面パンチありルールを始めたいという気持ちが強くなっていました。
当時は、格闘技通信という雑誌があり、私は毎月その雑誌を購入し、格闘技への憧れをどんどん強くしていっていました。
そして、その雑誌にはシュートボクシングのジムの”練習生募集”の広告がいくつも掲載されていました。
当時私が住んでいたのは西宮でした。
一番近いシュートボクシングのジムでも大阪で高校1年生の私にとっては、距離的にも会費的(会費は自分で稼いで出していました)にも難しいと感じていましたが、飲食店でのアルバイトの時間を増やし、思い切ってそのジムに通うことにしました。
アルバイトを頑張っていると少しお金に余裕が出てきました。
プロレスラーになりたいという夢はまだありましたので、格闘技の技術を上げつつも、筋肉をつけて体を大きくしたいという欲求もありました。
その年には、シュートボクシングに加えて、ボディビルジムにも通うようになりました。
残念ながら、どちらのジムも今はもうありませんが…。
シュートボクシングのジムに初めて行った日は忘れもしません。
私と同じような年代の人は一切おらず、強面のおじさんたちだけが練習していました。
後々分かることになるのですが、その方たちは、シュートボクシングのジム会長で現役選手だった皆さんでした。
試合前で合同練習をされていたそうです。
会長に「おい、柔軟して縄跳びしとけ」と言われ、訳の分からないまま適当に体を温めていました。
すると一人のおじさんが私に
「おい、リング上がれ」
と言ってこられました。
「あっ、はい」
と言ってロープをくぐってリングに入ろうとしたところ、
「お前!リング入る時は、リングお願いします!やろ!」
と怒鳴られました。
私は心の中で、
「リングに入る時のルールも教えてもらってないのに…」
と思いつつも、
「あっすみません。リングお願いします…」
と言って初めてリングに入りました。
プロレスを見て自分も上がってみたいと憧れていたリングに初めて入りましたが、感激する余韻を感じる間もなく、
「おい、ミット持ったる」
と言ってパンチングミットを持って準備してくださいました。
「ジャブを打ってこい」
と言われ、
「はい、分かりました」
と言って一発ジャブを打ったところ、そのおじさんからもジャブが飛んできました。
もちろんそれまで顔面パンチありルールを全くしたことのない私ですから、まともにジャブを食らいました。
心の中で「痛った~、なにするねん!このおっさん!大体お前誰やねん!」と怒りそうになりましたが、
そのおじさんの威圧感から怖くて何も言うことが出来ませんでした。
「お前、ジャブそんな遅く戻してたら、相手の反撃受けるの当たり前やろ!」
とまた怒鳴られました。
「だから、今日が初めてやっつうの…」と心の中で思いながらも口では、「はい」と答えるしかありませんでした。
そのおじさんは他のジムの会長だったことも後から知りました。
私は心の中で「このおっさん絶対にしばいたるからな」と思いながら初めての練習は終わりました。
そして空手は続けるもののどんどんキックボクシングで強くなりたいという気持ちが強くなっていくのでした。
次回に続きます。
吉沢陸